原告・被告ともに控訴

先月30日に福島地裁判決のあった浪江町津島訴訟について、住民ら原告と被告国、被告東電それぞれが昨日12日に控訴した。審理の場は仙台高裁へと移されることとなる。

一審では、国と東電に対して計約10億4000万を住民ら634人に賠償するよう命じたが、故郷の原状回復請求については却下とされていた。

控訴について原告団長の今野氏は「一審では過酷な被害を認めていただいた。控訴審でも原状回復という私たちの目的に近づけるような判決を期待して戦う」と話した。

一方、国は「関係省庁と協議した結果、上級審に判断を仰ぐ必要があるとの結論に達した」とコメントし、東電は「判決内容を精査し、総合的に判断した」とコメントした。

仙台高裁では、先の生業集団訴訟で国と東電の責任を認める判決を下しています(国と東電は上告している)。そのため、あくまで私個人の見解ですが、各地で判断が分かれている中であっても仙台高裁は一審の判決を支持するのではないかと想像しています。もし控訴審でも原告勝訴となると、これまでほぼ拮抗していた各地の司法判断が原告側に傾くことになります。

集団浪江津島訴訟 国と東電の責任認める

浪江町津島地区に住んでいた住民ら640人が原告となり国と東電を訴えた集団訴訟判決が、先週金曜7月30日に地裁郡山支部で言い渡されました。

判決では、一部棄却された原告6名を除く、634人に対して一人当たり150万円(一部減額された原告もいる)の慰謝料の支払いを命じ、その他争点となっていた津島区の原状回復費用については退けました。

大筋で原告勝訴となった今回の判決ですが、現状回復費用について認められなかった点において、原告団の今野団長は「完全勝利ではない」と悔しさを述べました。

これまで国の責任をについては司法の判断も割れており、認めたものは今回を含め9件、否定したものは8件となった。

なお、現時点で原告被告とも控訴するかについては言及していません。

中間指針見直し困難

原子力損害賠償紛争審査会の内田貴会長は30日、原発事故による避難者らが国や東電に損害賠償を求めた集団訴訟最高裁判決が確定するまで、賠償の基準となる中間指針の見直しは困難との見解を明らかにした。

これまでの全国の集団訴訟判決では、地裁・高裁で判断が割れており、内田会長は「司法判断がどのような形に統一されていくか、注意深く見守っているのが現状。(中間指針見直しは)最高裁などで判決が確定するのを待つ必要があるのではないか」と述べた。

まずもっての今後の賠償方針として、処理水放出による風評被害に対する賠償指針策定が東電に要求されているが、関係者・関係団体からは「事故後10年を経過して、損害立証が困難となり、東電が賠償をしないのではないか。」と懸念の声が上がっている。そのため、より実態に見合った賠償を東電に義務付ける旨を中間指針に記載するべきとの声もある中、今回の内田会長の発言は波紋を呼びそうだ。

 

さて、これまで賠償金として投入された金額は既に9兆円を超えており、今後も増加することになるが、ある種被災者の救済を盾に、国や東電に賠償金を迫る集団訴訟は過熱すると思われる。賠償金の拠出の関係上、その負担は税金や電気料金に現れ、一般国民の我々の懐にも影響を与える。

既に事故から10年以上を経過したが、東電が消滅事故を援用する気もなく、また現在も帰還困難区域が残っており帰還が進まない以上、今後また10年20年の賠償金を払い続けることになるであろう。

そんな状況で、中間指針をベースに裁判やADRでは、それを超える判決や和解が一般的となりつつある。さらなる賠償金支出を絞るため、中間指針の防衛に言及したものと思われる。

今回の内田会長の発言を、好意的に受け取るか、批判的に受け取るかは、あなたはどちらでしょうか?

風評賠償の枠組みを示す

福島県知事であり県原子力損害対策協議会の会長でもある内堀氏は、昨日21日、東電や国に対し、処理水放出に係る風評被害について早急に具体的な枠組みを提示することを求める要求書を提出した。それに対して、東電社長の小早川氏は、今年の夏中に枠組みを示すと応じた。

事故から10年が経過している中、各事業者に損害を立証することが非常に困難となっている現状を踏まえた賠償の枠組みが示されるか、今後の動向に注目です。

東電も控訴

今月2日の新潟地裁判決に対し、昨日15日に東電が不服として控訴した。

地裁判決では、東電に原告636人に対し計1億8,375万円の賠償命令が出ている一方で、国の責任については請求を棄却している。

なお、原告らは既に控訴している。

処理水の放出計画申請

原子力規制委員会の更田委員長は、昨日9日の会見で処理水の海洋放出に向けた実施計画の審査について、「8月中旬ぐらいまでに申請してほしい」との考えを述べました。

実際の放出には2年を要するとの見通しがなされているものの、全体工程についてはまだ示されていない。更田氏は「審査は割とシンプルな内容で、長くかかるとは予想していない」との説明もあり、発言の通り8月中旬に東電から申請があれば、その後近く放出計画が示されるであろう。

 

作業工程についての計画はさておき、およそ計画通りの工程を歩めるかは、関係者の理解を得られるかが鍵となる。国および東電には、風評被害等の問題について、引き続き丁寧な説明が求められるでしょう。

 

集団新潟避難者訴訟の判決

原発事故により新潟県に避難した住民ら801人らが、国と東電に対し慰謝料など計約88億5,500万円の損害賠償を求めた訴訟で、昨日2日、新潟地方裁判所は、被告国への請求を棄却し、被告東電には原告636人に計約1億8,375万円の支払いを命じた。

争点となった高さ10m超の津波が来る可能性が予見できたかについて、新潟地裁は長期評価の科学的根拠は不十分として「予見可能性の程度は低いか一定度に留まる」と判断。東電に対策を命じなかった国の対応は著しく合理性を欠くとは言えないとし、国の責任を否定した。

 

判決は、個別に損害賠償額を増額認定している点はあるものの、ほぼほぼ東電の公表賠償基準や中間指針等に準じたもので、実質被告国および東電の勝ちとみえる。